思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

熱に醒めた魚(うお)は独り、大海を目指し泳ぐ。

New generation

New generation



何となく体を揺らして、リズムに合わせて踊る。

どうやら彼は周りから少し離れた場所から世界を見ているようだ。

そして、周りに合わすことのできない自分と闘っている。

「もっとも高いところを見る人が最も遠くを見通せる」

リチャード・パック。彼はそれをカモメの一羽に例えて言った。

最も先に時代の波に気付いた人だけがその先へ行くことを許される。

Movementも、encoreも周りに合わすことのできない人たちのことを歌ったものだ。

New Placeでは過去の過ちもここでは関係がないという。

どこか一つ居場所を見つけられるのなら、誰かがそこで待っている。そう言っているように思える。

この曲たちは新しい居場所を見つける手助けにきっとなることだろう。

今こそ自分を縛っていたしがらみから解き放って、自由の波に向かって泳いでゆこう。

今迷っている全ての人に届け。

記憶の中から歌を10、掘り出して語る。

1 here i am /Dragon Ash

2ホタル/スピッツ

3白波トップウォーター/サカナクション

4夕映/GOOD ON THE REEL

5ghost in the rain/The HIATUS

6ジュブナイル/amazarashi

7diachronic/Nothing's Carved In Stone

8sad&beautiful world/ストレイテナー

9待ちわびた音色/mol-74

10かくれんぼ/BIGMAMA


という訳で、これから栄光の架け橋を掛けながら語りたいと思う。

1 here i am /Dragon Ash
シングルのジャケも素敵な一枚。
夜中、運転しながら静かに掛けると本当に心地いい。

2ホタル/スピッツ
なぜか季節は「冬」のように聞こえる一曲。
蛍が飛び交うのは当たり前だけど、夏なのにね。

3白波トップウォーター/サカナクション
世界が水の中に埋もれて、きらきら輝いて見える。
白くて透明な水の中を行ったり来たりするような感覚に襲われる。

4夕映/GOOD ON THE REEL
悲しみの中に射す一筋の光。
大人が壊した心のかけらをずっと持っている少年を想うだけで涙がでてくる。
きっとそれは硝子のように尖っていて、飴のように琥珀色をしているのだろう。

5ghost in the rain/The HIATUS
寒い雨の中、一人聴いていたい。
淋しがりの幽霊が一人ぽつんと雨の中立っている。
きっと彼は男性で背が高く、青白い顔をしていて髪が長い人で、深い紺色の影を引きずっている。

6ジュブナイル/amazarashi
若い少年少女へ向けたエール。
「怖いとは言うべきじゃないな、それを分かって始めたんだろ?」


7diachronic/Nothing's Carved In Stone
大迫力のパノラマ写真のような骨太なロックサウンドが魅力。
サビを何度もリピートしたことは忘れず。


8sad&beautiful world/ストレイテナー
題名のないレコードという最初のセリフからもう涙。
色彩を失った世界でも生きていくという話は「lightning」にも通じる。

9待ちわびた音色/mol-74
世界が鮮やかに切り取られて、水彩画のように遠くまで広がってゆく。
春をそのまま音楽にしたらこうなるのだろう。

10かくれんぼ/BIGMAMA
「君が世界を敵に回しても僕が全部味方にしてあげるから」という歌詞で泣かない人などいないと思う。
実はこの曲で彼らを知った。
PVがとてもいいから、見ていない人は一聴の価値あり。

個人的に大好きなのはエルレのMiddle of nowhere、何度でも聴ける。

『絶望とは未来にあるのではなく、その人間の過去の集積として、彼の行く手に置かれたものである。』

白石一文は「記憶」と深く結びついている。
このテーマは神林長平(所詮言語SFと呼ばれるものだ)や山田宗樹も取り上げていて、
彼らは共に「生命の記憶」、生まれてから死ぬまでに魂に染み付いた記憶について述べている。
人は一人ひとりそれぞれ唯一無二の自然に生まれた「物語」を生きていて、毎日少しずつ世界を作り出している。
(このあたりは村上春樹が詳しい。彼は物語の担い手であり、類まれな才能の保持者だ)
記憶は各々の物語だと鮫島みずきは語る。魂が消えてもその精神は才能や遺伝として、子や孫たちに受け継がれてゆく。
私たちの記憶そのものこそ、私たちが生きていく意味であることに他ならないのだ。
肉体とはそのために存在する入れ物に過ぎず、私たちの思考や精神は受け継がれてゆく限り、不滅だ。
記憶の渚にて 【電子限定オリジナル特典付き】 (角川書店単行本)


「絶望とは未来にあるのではなく、その人間の過去の集積として、彼の行く手に置かれたものである。
目の前に壁のようにうずたかく積み上げられた過去に我々は怖気づき、そして恐怖・絶望する。
しかしそれは、実際はすでに終わってしまったものであり、未来は、窓のむこうの晴れ渡る空のようにどこまでも遠く広がり、
前方には何ひとつわれわれを邪魔立てするものとてないのだ。われわれは過去に、さらにはその過去の生み出した幻影に怯えて、
あらゆる人間にとって不確実ーつまりは無限の可能性を孕んだものーーとしての未来からつい目を逸らしてしまう。
それが絶望の真の正体に他ならない。」
ー手塚仁の遺したメモ(エピグラフ)より

ここで言われているのは、「人間の思い込み」こそが絶望という化け物を生み出してしまう、ということだろう。
小さい子供が絶望しないように、(よほどのことがない限り)「過去」が蓄積する程、人は絶望しやすくなる。
理想と現実のギャップがあるからだ。

しかし、本当はそんな絶望(過去が積み重なったもの)なんてまやかしに過ぎないのだ。

本当の未来は澄み切った空のようにどこまでも遠く広がっているというのが彼(手塚仁、作者)の伝えたかった感情だろう。
彼は膨大な記憶を操る「記憶者」であり、「小説家」でもあるのだから。

こめかみに銃を当てた少年は、大人になれない子どもたちが待つ汽車に乗る。

今思うとガリレオというバンドは年齢の割に遥かに達観していたと知る。

僕から君へ

僕から君へ

たった一回だけライブに行ったことがあるのが、放たれた記念すべき一曲目は
くそったれども」(曲名)
だった。

いや、嘘じゃない。

…まあ。いろんなことがあったのだろう、不満も溜まっていたのかもしれない。

だから斜に構えてしまったのだろう。

サリンジャーやヘッセといった文学を好んでいるのはアルバムのタイトルから見て取れるし。

学生時代の私はそんな文学に触れることもせず、漠然と毎日を過ごしていて、文学に触れるようになったのは大人になってから。

もっと早くから読み込んでおけばいろんなことが分かったのかもしれなくて、少し複雑な気持ちになる。

昔、音楽雑誌で彼らが語っていたのは、残酷さと純粋さについてだった。

純粋な作品を好む一方で、残酷な拷問器具を検索していたりする。

そう、かの作家のように、丁寧で残酷な「おとぎ話」。

「大人になれない子供たち」を乗せた「汽車」。

それに乗っていたのは誰なのだろう。

歌い手である彼らではないことは確かだが。

こめかみに銃を当てた少年は、きっとシーモアグラースのことを暗示しているのだろう。

彼はあっけなく命を絶ってしまった。バナナフィッシュという、意味深な創作した生き物の名を告げながら。

ガリレオは透き通るほどの純粋さと、奥に秘めた死を抱え込みながら歌い続けた稀有なバンドだ。

『恋の寿命』が好きです。

僕は捨てた夢を拾い集めることにした。

絶体絶命(通常盤)

絶体絶命(通常盤)

RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~

RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~


急に思い当って学生時代に聴いていた歌を掘り起こすことにした。
話が飛び飛びで申し訳ない。
とりあえず前前前世で止まってる人は全員有心論を聴きゃいいと思う。(押し付け)

どうやら私はおかずのごはんあたりのよーじろー(ひらがな)の声が好きで、
螢や閉じた光とか思い当たる節はかなりある。
億万笑者は今でも胸に迫ってくるし、シリメツレツは色あせることがない。
藤くんの星の鳥のアルバムが好きで、付属品の王さまの本でわんわん泣いたのは私だけじゃないと思いたい。
プラネタリウムはどうしてあんなにも残酷で美しいのだろう。

そしてそんなことを言いつつ私はAlternative Plansを引き出して聴いている。
「僕の心は段ボール」っぽい例えが歌詞の中にあったような気がして、切なくなる。

刹那や遥かを好んでいた自分に戻ろう。

そう決心した。

サカナクションでこれだけは聞いてほしいおすすめ曲10曲。

新宝島から入った人も、アルクアラウンド、アイデンティティから入った人も、

(多分、)風から入った人も、三日月サンセットからずっと好きな人も、

サカナ好きな全ての人にお勧めする10曲。

アルクアラウンド、アイデンティティ、ルーキーは都合により割愛)


1エンドレス

2白波トップウォーター

3シーラカンスと僕

4アドベンチャー

5仮面の街

6ネイティブダンサー

7セントレイ

8夜の東側

9グッドバイ

10目が明く藍色



1エンドレス

「見えない世界に色を付ける声は、誰だ」。

数珠つなぎのように回ってゆく誰かをあざ笑う声。

それを俯瞰する人、思い悩む人、さまざまな行為がこの一曲に詰まっている。

サイレンに似た音から始まるのもポイント。

今までため込んでいた辛さを解き放ち、泣き叫ぶようなサビは圧巻。

元祖「エモい」曲。(感情的)



2白波トップウォーター

「悲しい夜の中でうずくまって泣いてたろ。」

悲しさもすべて分かってくれるかのような、包括されるかのような歌詞が良い。

白い波が瓶の中できらきらと輝いているかのような美しい音も特徴。

「浮かび続けるんだフローター」。



3シーラカンスと僕

恐らく究極の傑作。(個人談)。

暗い夜の中から動き出す一匹の深海魚が、退屈そうにあくびをしながら空に登ってゆく。

鈴を鳴らしたかのようなサビ前の電子音はため息をつくことさえ忘れてしまう。

夜、青暗い部屋の中でヘッドホンを付けて静かに聴くといい。


4アドベンチャー

ユートピア(理想郷)に飛び出さんがばかりのテンポのある曲。

「ロックと本」が重なりあう状況を考察していることを考えると、このころから模索していたらしい。

ある意味一郎さんらしい(Kleeもしかり。あれは芸術×音楽だった。)


5仮面の街

感情を押し殺し、脅迫観念にも似た機械的なリフ。

手をごしごし洗っている姿が思い出されそうなサビ、

売れ残った林檎に例えた自分と仮面の他者が衝撃的。

最近の緩い曲に慣れている人からすれば、かなり攻撃的な曲。


6ネイティブダンサー

雪が降ると聞きたくなる曲。

靴で軽やかに踊る姿は見ていて楽しい。

電子音の中で光る靴は斬新で抒情的。

雪と青春の掛け合わせが淡くて儚くて好き。

もうあれでライブ出たらいいんじゃないかな。



7セントレイ

珍しく明るい曲。(本人曰く)

煙の中を歩き出すという、新しい世界への転換期を思い起こさせる希望に満ちた曲。

メジャーデビュー曲だった(はず)

電子音が跳ねるように駆け巡り、テンションが上がる。

シンシロのリード曲であり、印象が強い。

最後の電子音が軽やかだ。



8夜の東側

静かにしんみりと、可愛らしい声から始まる。

「テレビの明かりだけで夜を読んでた」という出だしが印象的。

生活感あふれる情景描写から、いきなり跳躍する。

一郎さんから切っても切り離せない、「夜」からお別れを告げ、ゆっくりと朝の方へ歩いていきそうな歌。


9グッドバイ

さよエモ(さよならはエモーション)に次ぐ「エモい」比較的新しい曲。

太宰から影響を受けたこの曲は冥府の番人、カロンを思い出す。

何か(この世、俗世)からの離脱を図っていそうな曲。

ライブでは歌詞を変えて歌われる。悲しく胸を締め付けられそうなサビの切実さは類を見ない。


10目が明く藍色

とにかく絢爛としか言いようがない曲。

聴き終わるのにジャスト七分かかる。

青い制服のボタンをいじる主人公の描写から、いきなりライターの光にスポットライトが当たる、壮大な叙事詩のような曲。

KiKUUikiの大トリであり、一番存在感がある。

青に魅了されたきっかけの曲である。


そのほかにもワードとか黄色い車とかモノクロトウキョーとかKleeとか
涙ディライトとかミュージックとかバッハとかホーリーダンスとか踊り子とか
ナイトフィッシングイズグッドとか沢山あるけれど、この記事を読んでいる人にお任せしよう。

祝、ベスト盤発売!

村上春樹とスピッツに共通する、「絶妙な既視感」。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

絶妙な既視感、という物がある。

それは「はじめて見た(聴いた)のに、生まれる前から知っていたような気がする」というものだ。

これを特に感じるのが、村上春樹スピッツだ。

特に1Q84

初めて読むのに、なぜか昔から知っていたような気がして(昔ながらの友人にばったり再会したような気がして)、長いのに読み進めてしまう。

そして必ず場面が印象に残り、かなり前に読んだはずなのになぜか忘れることがない。

長い長い青豆と天吾のボーイ・ミーツ・ガールの部分よりも、そこまでに行き着く事件の方が鮮明に記憶に残っている。

たとえば、「タイガーをあなたの車に」。

ふかえりの「空気さなぎ」と「リトル・ピープル」。

意味は分からない。大人になった今でも意味が判明しない。

読み返せば分かるのだろうが生憎手元に本がない。

なんとなく「再生するもの」と「不気味なもの」ということだけしかわからない。

(実際、ほかの作品で村上春樹は小人を不気味なものとして扱っている。
象工場で働く青年の身体に入って踊り、女が腐敗する幻覚を見せる嫌がらせを行う。
読み返してみれば、小人の一人称が「あたし」から「俺」に切り替わる部分があった。どうしてなんだろう。
一説では「小人の本性」が出たからだとか…。)

リトル・ピープルたちは言った。「ほうほう

他の村上作品とは逸脱した世界観を放っている。

というより、この本に関して、しっくり合うであろうジャンルを私は見つけ出すことができない。

スピッツの日なたの窓にあこがれて。

「メリーゴーラウンド」のリフレインが耳に心地よい。

寒い冬の昼の陽だまりの中で聴くと最高である。

ずっと前から聴いていたような気がする。

あの錯覚はいったい何なのだろう。

この現象にデジャブ以外の名前があれば教えてほしい。