甘く儚い世界に酔う。
甘く儚い世界でただ一人、酔うような作品が好きだ。
それは、一見すれば独りよがりに見えるかもしれない。
自己陶酔でもあるから、気味が悪いと思われても仕方がない。
しかし、それぐらい好きなのだ。
いつ読んだか分からないが、咳をするたびに赤い彼岸花を零す男と魚の鱗を得てしまった男が出てくる小説を読んだ。
彼らは絶望していた。
自分の手で壊れやすい物を壊せばいいと思っていた。
どうもリコリスを聴くたびに思い出す。
その退廃的な小説を。
朽ち果て、歪んだ世界にただ一つ零れ落ちた紅い花のことを、
私は忘れはしないだろう。
己を刺して血を流してもなお、人を思う気持ち。
絶望の中に、死の中に見出す希望。
それがゆがんだ形であっても、人は必ず受け入れ、愛することができる。
ビジュアル系、アイドル、ポストロック、幻想小説。そのような作品には退廃が付きまとう。
見た目は違うが本質は同じかもしれない。
だって人は、自分を満たしてくれるものを探して、自分に似たものを好きになるのだから。
それを汚いものだと目を逸らして、排除するのはどうかと思う。
物事の綺麗なことと汚いことは相反するものではないのだから。
同じものの表と裏なのだから。