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思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

宮本輝はあなたをきっと助けてくれる。

 

青が散る〈上〉 (文春文庫)

青が散る〈上〉 (文春文庫)

 
青が散る〈下〉 (文春文庫)

青が散る〈下〉 (文春文庫)

 

 

星々の悲しみ (文春文庫)

星々の悲しみ (文春文庫)

 

 

心が疲れてしまった時や、打ちのめされた時。

自分が窮地に追い込まれた時、あなたは何に助けを求めるだろうか?

友人にアドバイスを貰う?

音楽や映画や漫画を見聞きする?

それとも、現実から逃げて目を背ける?

そんなときはがむしゃらに頑張る人が出てくる小説を読めばいい。

 

宮本輝の小説に出てくる登場人物は、いつもスポーツに打ち込んでいる。

あるものはテニスに一生を懸け、あるものはゴルフの素振りをひたすら体に叩き込む。

彼らはがむしゃらに努力している。

それは努力していない人からすると、見苦しく、あまり見栄えは良くない。

天才でもないし、中途半端のそこそこの才能しか持たない人が主人公だ。

それでも彼らは自分の頭で秘策を練り、技術を編み出し、勝てそうにない人たちにも立ち向かってゆく。

そんな彼らを馬鹿にすることなんてできるだろうか?

青が散る」の燎平は何枚も上手の相手のポンクに勝つために、自分のできる範囲で全力で打ち方や思考回路の工夫をする。

勿論、全力だ。負けるだなんて一ミリも考えてはいない。勝てると思っている。

ポンクは中途半端で詰めが甘い男だから、必ず肝心なところでへまをする。

そこを突く。

実際、その全力でぶつかった試合がどうだったかは、あなたの目で確かめてほしい。

「星々の悲しみ」はあまりにも描写が緻密で美しく、それでいてどこか心の奥に潜む闇を描き出していて切ない。

数えきれないぐらいたくさんの蝶の標本が飾られた不思議な美容院が舞台の「蝶」が個人的に一番好きだ。

治らない病気を患った友人、突然いなくなった男。盗み出された美しい名画。西瓜売りの男。

叶わない恋愛。意味深な言葉を残す教師とパティシエ。

ガリバーが歌う哀愁漂う「人間の駱駝」。

それらが鮮やかによみがえってくることだろう。

読み終わった後、あなたはきっと「王道」という言葉が好きになっているはずだ。