思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

少年性を秘められた物語を探す。

少年性を秘めた作品は消費されにくい。

と同時に、危うい。

純粋であるがゆえに、いつ何かの衝撃に耐えかねて崩壊してしまうか分からないからだ。

例えば、それはスピッツ

初期のサカナクション

現在のストレイテナー

砂糖を甘く煮詰めたような音楽。

分かりにくいなら、「少年のような声で歌われた音楽」と言った方が良いか。

ただ少年性だけを追求したものではない。それはただの商業音楽だ。ハイトーンボイスだ。

大きな違いはそこに心を、感情が籠っているかどうかだ。


性別を超え、切なげなそれらは永遠に年を取らぬ物語であり、消費を知らない。

それらを歌い続けるものはその一瞬だけ声を切り取られ、硝子質の剥製として残る。

歌う彼らは歳を取るが、歌っている一瞬だけは歳を取らない。

本能に忠実なので、狂気も併せ持っている。

普遍的な事実は消費されにくく、また同時に半永久的に残り続ける。

俗にいう「エモい」=感情的、もしくは感傷的な音楽がそれに当てはまるのだろう。

感情と鬱は相反のようで、実は同じものの表と裏なのだ。


恋愛でいえば、純愛は意識的に好まれ、ドロドロとした不倫は潜在的に好まれる。

ちょうど、好奇心や怖いもの見たさで本のページを捲るのと似ている。

本能に勝てない、と言った方が良いだろうか。

彼らの物語は前者だ。意識的に不純を取り除いた前者。

または、前者と後者を組み合わせたもの、だろうか。

彼らは高確率で硬質の黒目がちの瞳を持っている。

本来なら遠いはずの「死」が近い者しか持たぬ世界。

普通の人が一生かかっても行けない場所。

それに彼らはいとも容易く辿り着いてしまうのだ。


辿り付いたものだけが「金字塔」を打ち立てることができる。

それが才能とも呪いとも揶揄される宿命だ。

批判も当然伴うだろう。

強靭な作品(男らしい、女らしい)作品と「性別を超えた(中性的な)」物語。

私はそれらを秘めた作品を集め続けている。

今も。そして、これからも。

果ててしまうまで、ずっと。