溶けた夕暮れ、魂と祈りを乗せ
- 作者: 桜井晴也
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/11/11
- メディア: 単行本
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死ぬ直前にもし本が一冊読めるとしたら、私は迷わず桜井晴也の世界泥棒を手元に置くだろう。
固定観念を鮮やかに破壊している、今のところこの世で一番好きな小説だ。
スピッツのワタリを聴きながらページを捲る。
ポップコーンを食べながら、あるいは寝転がりながら、読みまくったせいか四隅が見事に擦り切れている。
幽霊たちと野人たちがはびこる中、子どもたちは銃を打ち合い、世界は夕暮れのまま固定されたまま動かない。
柊と主人公、あや、真山くんと意味ちゃんたちが語る話は「哲学」に近い。
百瀬という「決闘」の首謀者の真の目的は?
彼は淋しくて、せめてこの地球という惑星だけでも美しいままであってほしいと願っていたのでは?
そう解釈した。
現実から逃げ、自分を守るために平気で嘘をつくあやのほうが愚かではないのではないか。
国境を越えたところには名も知らぬ子供たちが埋められた墓場がある。
いやに無邪気に歌われるあのフレーズを思い出す。「戦争があるんだって!」
子どもたちは真っ先に犠牲者となる。そこに半端な恵みなどというお涙ちょうだいの話などない。
しかし、祈りはある。緑色をした猫の蛆の光と、それが成虫になった少年のまばゆい光だ。
妹が語る言葉に、私は嗚咽が止まらなかった。
この惑星のいきものはみんな壊れやすかったり、死にやすかったり、失われやすかったり、
そこなわれやすかったりして、
とにかく、とても繊細でとても傷つきやすくて、少しなにかをしただけですぐに精神を狂わせてしまったり、
肉体を失ってしまったりするんです。
私は彼の次の作品をぜひ読んでみたい。例え読みづらくとも。難解であろうとも。
一つの大きな叙事詩のようなこの物語が存在しなければ、とっくに死んでいただろう。
強烈なほどまでに退廃的で、残酷でいて愛に満ち溢れている。
私なんぞがこの物語の真の意味を語るには、100年早すぎる。(と言いつつ語っている。)
がっつり彼に影響されたのは言うまでもない。