思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

家畜化される子供たち。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

※ネタバレ注意!

もし、自分が自分じゃなく、誰かのなり替わりだということが分かったなら、どう生きるのだろう。

なり替わりの人間にだって人権はある。

だってその人間は生きているのだから。

生きていて、会話もしているのだから。心臓が脈を打っているのだから。

それでも牛や豚と同じように、半ば家畜と化し、ヘールシャムという養成所で大切に飼われる子供たち。

最初に読んだ時、私はそのあまりにもむごい状況を「胸糞が悪い」と切り捨てた。

でも今は違う。「なんて悲しいんだろう」という言葉しか出てこない。

これが臓器移植を心待ちにしている人だったらどうだろう?

愛する我が子が心臓の病を患っていて、誰かの脳死を待たなくてはならないとき、

それでも誰かの死を待ち望めるのだろうか?

臓器を提供するためだけに生かされた子供たちを殺せるのだろうか?

かなり倫理観が問われることになるだろう。

それでも、嘘でもいいから愛してほしい。

クローンとしての愛ではなく、一人の人間として愛してほしい。

彼らはオリジナルのように、実の母親には抱かれない。

抱かれて「オーベイビー、オーベイビー、私を離さないで」なんて歌われない。

誰かが、たとえクローンであっても悲しむ未来なんていらない。

iPS細胞のような、「自らの身体の一部」を使ったテクノロジーがもっと普及しますようにと、切実に願うばかりだ。