好きな作家は何ですか?好きな本は?
という訳で、少し語ってみることにする。
現実と夢想の境界を彷徨うのは川上弘美で、私は彼女が生み出すへんないきもの(大概、のようなものと呼ばれる。の・ようなものではない)が好きだから読んでいるようなものだ。
神様に出てくるくま(くれぐれも漢字ではない)をはじめ、コスミスミコ(壺入り)、ねずみのようなもの、狐のような狐でないもの、
モグラモチ、ウゴロモチ、女になる蛇、ねこま(NOTねこ)、ジャンとルイ(鳥類)、女の子(小さくなったり銀色になったり老化したりする)
…。といったバリエーション豊かな登場人物が好きだからだ。
それと、果てが永遠に存在しない、ということ。
くめどもくめども尽きない水のように、彼女の作品には終わりという区切りがない。
そのため、何度も何度も読むことができる。
福永武彦は、人間の心の非常に弱い部分である「エゴイズム」と、
それに対してひたすらもがく人間の苦しみと、そこから生じる手のひらで優しく撫でるような優しさを感じ取ることができるから好きだ。
普通の愛とは違う、どことなく背徳感を帯びた心情を、精密な風景画のように繊細に書き綴ることができる作家。
若草のように儚くも、身を焼きながらも生きるその姿が好きなのだ。
どちらの作家も、情景描写が目に見えるようで、気に入っている。