思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

臆病者たちのためのマーチ

おいでよ

おいでよ

一方的に差別され、孤独になり、
世界を孤独に見つめ、
たったひとりの信頼すべき人間がいる、
登場人物が出てくる小説が好きだ。
例外もあるが。

それは小鳥の叔父さんであり、
リトル・アリョーヒンであり、
マイクロバスを運転する信男、
灯台を守り続けるシルバー、
自殺を試みて失敗するベロニカ、
飛ぶことを求めたジョナサン、
差別に苦しむ丑松、
同業者の男に惚れ込んだ夏目、
宇宙の精力を制作した栗山さん、
友人を神格化した汐見である。

愚かに映るのかもしれない。
不器用で、近づきがたいイメージを抱くのも仕方がない。
生きることだけで精一杯なのだから。

彼らの方がずっと、聞こえのいい言葉で取り繕う人間より、遥かに信用できる。そんな風に考えてしまうのは、私が捻くれているからだろうか。

ぼくのゆうれい そばにいたいよ
ぼくのゆうれい そばにおいでよ


People In The Boxの「おいでよ」「八月」「沈黙」を聴くたびに泣きそうになるのはなぜなのか。

ああきっと、泣く寸前の囁き声で呼びかけているような歌が好きなんだろうな、

特に「そうさ きみの世界で選べるのは」「夢を視ることに目醒めるのさ」「青い窓に白い空」のあたり。




沈黙は遠藤周作というより、
村上春樹の「氷男」だ、多分。

そして「おいでよ」は
川上未映子の「十三月怪談」だ。