思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

優しい音が爆ぜる瞬間。


深い悲しみの中にこそ優しさは宿る。

葛藤、失望、孤独。

それらを抱えた人たちを優しく慰め、気持ちを楽にしてくれる、優しい言葉のような音楽。

mol-74のcolorsは、そんなアルバムだ。

彼らの音楽は誰にでも優しく溶け込み、包み込んでゆく。

繊細なタッチで描かれた水彩画のように、柔らかく心を溶かす。

花火のようにはじけ飛ぶようなイントロが印象的なlightが一番好きだ。

君を追い越す姿が幻想的で、光景が想像できる。


「あなた」が与えてくれた色や声に感謝するhazelをはじめ、

恋のような風に吹かれる姿が愛しいyellow、

ちくちくと心を刺す薔薇の棘に苦しみ、「嫌い」だと連呼するroze。

優しくて可愛らしいオルゴールのように、何度でも繰り返し聞きたくなる。


だってそれは人の心そのものだから。

心を持たなければ、好きになれないから。


あんなに憎しみや悲しみでいっぱいになっていた心が、少し軽くなっている。

いや、軽いなんてものではない。気持ちが穏やかになっている。

「感謝」や「祝福」を音楽で示せば、こういったものになるのだろうか。

こんなに素敵なアーティストに出合えて良かった。


私はこのアルバムを大切な誰かに渡したいと本気で考えている。

どこかで打ちひしがれて泣いている誰か。

優しい心を持っている誰か。

きっとこの小さなおとぎ話のようなCDは、人を裏切ったりはしないから。


colors

colors