思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

それでも三月はまたやってきて、僕らは歌を歌っているんだ。

あれから七年も経つ。

あの日。

世界が否応がなしに無慈悲な暴力によってすべてが塗り替えられてしまった。

水が買い占められ、テレビは同じACのCMしか流れず、全てが混乱の境地に置かれていた。

そんな想像も出来ないような強大な力に対抗するために、私たちが求めたのは希望であり、音楽だった。

それも明るいポップソングではなく、現実を吐き出すロック。

そうしてまもなく、義援金を寄付するロックバンドが現れた。

誰に支持されたのでもなく、自らの意思で動き、人々の役に立つ行動を取った。

彼らの行動に嘘はなかった。

【期間限定盤】Smile(DVD付)

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奇跡

奇跡

INORI

INORI

私はこの曲たちを聴くといまだに涙が出てくる。

「震災前」と「震災後」で音楽は大きく姿を変えた。

地上デジタル放送になって、高画質の液晶でテレビを見られるようになった。

アーティストもライブ活動が主流になり、音楽は配信サービスが主役になった。

震災前、目もくれなかった人たちがロックバンドに目を向け出したのもこの時からだ。

サカナクションが「震災前」のアーティストなら、しゃんぺもとい[Alexandros]は「震災後」のアーティストだ。

しかし、両者は似ていないようでお互いの主張が似ている。それを譲らないというところも。

後に国民的バンドになるセカオワが漢字とひらがなだったときの話であり、amazarashiという逸脱した新人が出たのは、「震災前」だ。

震災前のアーティストである野田洋次郎石毛輝、畠山承平から始まった「踊れるロック」が主流になったのもこのころからだろう。

KANA-BOONやKEYTALK、キュウソネコカミを合わせて「3K」。

彼らが注目を集め出したのは「震災後」だ。

みんな「我を忘れて」踊りたい。

なぜなら「忘れてしまいたいぐらい、辛いことや嫌なことがいっぱいだから」。

それを吹き飛ばしてくれたのが彼らの音楽だった。

今はその主流すら終わりを迎えつつある。それほどまでに世界は、シーンは生き物のように変わっている。

闇の中から生み出された作品は、死なない。

それは渾身の叫びであり、まぎれもない生身の言葉だ。

どんな絶望の中でも、僕らは歌を歌い続ける。

そしてそれはこの世界が終わるまで、決して途絶えることはないだろう。

長々と書いてしまったが、言いたかったのはこの三行。

あなたにとって、「人生を変えた」音楽は何ですか?

そして彼らに出会ったのはきっと、「震災前」と「震災後」のちょうど中間の2012年から13年あたりではないですか?