思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

肉体を持たぬ、視点だけの存在。

存在が消える声というものがある。

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アジカンの、特にバラード曲には肉体が存在しない。

彼の曲を聴いていると、性別を全く感じさせない。
気怠い声。それなのに質感はさらっとしている。

近すぎず、遠すぎない場所で歌われる。
もしくはSF小説の中の登場人物のようだ。

もしくは、ある一定の視点で連写された写真。

歌詞に耳を澄ませた瞬間、そこに「後藤正文」という人間は消えていて、
そこにはカメラのような視点と心理描写が残されている。

そこに肉体は存在しない。
あるのは描写だけであり、共感を無意識に誘う歌詞だけだ。
そして、それらは心に寄り添う。
私たちの積み重なった悲しみを癒すように。

新時代の幕開けを

「未来は今この瞬間にも作り続けられてるんだって。」

未来を予測するテレビ番組があって、その衝撃が強すぎてもう、何を言えばいいのか分からなくなった。

人間の選別、テクノロジーと人間の融合、はたまた新事実の証言まで…。

今の時代は予測できなくて、昨日まで当たり前だった世界が、明日になれば通用しないというのもざらにある。

どうやら、新しい時代を受け入れていかなければ対応は難しいみたいだ。

いつだって、先を見通す人がいて、私たちはその人たちの後を追ってゆく。

SFの世界は滅びない。たとえその世界が実現されたとしても、そこを辿ってゆく価値はきっとある。

私たちに未来は分からないけれど、私たちに未来を作っていける力はきっとあるはずだから。

1+1=1

きっと、1+1は2以上の何かを併せ持っているのだ。

たくさんの蝋燭の炎を見て、何を思い浮かべるだろう。

それは命の暗喩だろうか。

それとも、なにか呪術めいた黄泉がえりのことだろうか。

言語では理解できない事柄が、世界には存在する。

見たことも聞いたこともない、異国の地に体だけ放り込まれてしまったような疑似体験。

画面に映っていた男が、画面を見ている「こちら側」に気付いたかのように見つめる。

スクリーンの中でしか生きられない者たちがこちら側を見つめるという、観客と役者が反転したような感覚。

まるで村上春樹の小説に出てくる「顔のない男」のように。

白黒のスクリーンから映し出される風景は、カラーの風景よりも鮮明に焼きつく。

男の現実と、故郷の思い出が水で繋がる。

滴る水。溢れる水。体を横たえ、流れる滝や雨のイメージ。それらは不思議と嫌な気持ちがしてこない。

男の視線と私の視線がぶつかる。彼は確実に、画面の中で「生きている」。

チャップリンと映画の中で再会したらこのような気持ちになるのだろうか。

水は生者と死者を繋ぐ鍵のようなものだ。

革命を叫んだ男は火だるまになって転げまわる。

彼には水の守りを与えることができなかった。

ある種の宗教画のような、何かの新しい始まりの示唆を示すようで、哲学的な要素が満載だった。

一生に一回は見ておいて損はない映画だ。

軋轢から逃れる蜜蜂のように

ミツバチのささやき [DVD]

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子どものころは誰にだって思い浮かぶことがある。

例えば、おじいちゃんの家と、自分の家が押し入れで繋がっているような夢を見たこと。

学校帰りに道草を食っていたら、近所の草むらでバッタを見つけて、

捕まえてふと空を見たら明らかに人間より大きな真っ黒い鳥の影を見たこととか。

少し不思議であり、少し不気味で、かつて身近にあったはずの出来事たち。

そういったものは大人になるにつれ、忘れられていってしまう。

彼らに出会える映画がある。

大人になった今では、おとぎ話にも社会風刺や、残酷な面があるということを知っている。

そんな皮肉も含めて、少し不思議で残酷な精霊たちに会いに行こう。

音楽の中から生まれた登場人物たち。

曲を聞いて書き綴った、登場人物たち。
二次創作。

ミスタ・パトリオット
ほんとうは「ミスター・パトリオット」だけど、言いやすいからこの名前で。
緑色のもじゃもじゃ頭。つまり、天然パーマ。
マイケルジャクソンみたいな帽子をかぶり、スーツを着込む。
左目の下にほくろのように、小さく青いひとつ星のメイクをしている、
ブリキで出来た両手を持つ黒い目の男性。
身長は180㎝と高い。悲しい時には笑い、笑いたいときには悲しむ。
機械のように、その動きはどこかぎこちない。
実はある青年が姿を変えたもの。
彼が犯した過ちのせいで、世界は悲しみに包まれてしまった。
手に持った大きな絵筆をバトンのように回す。バケツを持っていて、これもまた大きい。
バケツの中の水は、いつだって真っ青だ。
なぜならその青い水は、人の目のつかないところで泣いた、彼自身の涙だからだ。


キャノンボールのジーニアス
闇を斬る高性能なブラックバード、という限り高飛車なカラス。
普通のカラスとは違い、身体が一回り大きく隻眼。
目の色は銀色。
体は漆黒でつやつやしており、くちばしは太く長く、(ハシブトガラス)、
足が通常のカラスより少しだけ太い。しゃがれた声で大きく鳴く。
全体的に筋肉質。
疾風のように灰色の空を自在に飛び回り、怪物に乗る「君」の相棒。
かまいたちと混同されることもある。


「君」と「怪物」

「君」
怪物に乗っている時点で恐らく人外。
しかし表向きは普通の人間のように見える。十代前半の少年。
チェックのポロシャツとジーンズをはいていて、靴は白地に黄緑のヒモが付いたスニーカー。
目はぱっちりと大きく童顔。髪は黒くやや長め。伏し目がちで頼りない印象を受ける。
しかし怪物と一緒に力を使うと姿が豹変する。
身長がぐんと伸び、喜怒哀楽がはっきりし、目力のあるしっかりした感じになる。
難しい呪文も使いこなす。

「怪物」
夜をそのまま切り取ってきたのかと思うぐらい青黒い生き物。
体長は5メートルほど。布のように襞があるので小さく見える。
どう見ても、シーツかマントの切れ端に、申し訳ない程度に角が生えたようなものとしか思えない。
目は退化していて光を感じる程度。とても小さく、一センチにも満たない。
それが口の上に点々と十個ぐらいついている。(貝類の目のように)。
力を使うと体が赤紫色に変色し、かぱーっと口が大きく開く。しかし歯はない。
同じようにして食事もする。食物は咀嚼するのではなく、掃除機のように一瞬で「吸い込む」。
こんな形状でも体重は500キロある。人一人が座れる。どうして空を飛べるのかは内緒。
四本脚で歩き、足は象のようにどっしりと太い。白く丸っこい5つの爪がある。
お尻から悪魔のように尖った尻尾が長く伸びている。のこぎりのように細かな返しが付いている。
伸縮自在であり、普段は犬ぐらいの長さである。怒ると真っ赤になり、相手を突き刺す武器になる。

「怪物君の空、その訳を聞いてよ。ミスタ・パトリオット。」

KAMAKURA

KAMAKURA

君繋ファイブエム

君繋ファイブエム

ワールド ワールド ワールド

ワールド ワールド ワールド

怪物君の空と、その訳をと、No.9とネオテニーが好き。

ゴッチの音楽にはきっと、ニコ動で「驚異的な中毒性」と呼ばれる成分がたっぷり配合されているに違いない。

リピート必須であるほど、こんなに曲調は明るいのに、歌っていることは胸を締めつけるほど切ないのはなんでだろう。

もう誰も悲しませないで。

誰かを悲しませた記憶があるのだろうか。

ミスタ・パトリオットは何の過ちを犯したのだろう。

ネオテニー」の羽虫たちはきっと、「サイレン」に出てくる蜉蝣たちだ。

訳すと「幼形成熟」。ウーパールーパーが分かりやすい。

蜉蝣は不完全変態。その未熟なまま儚く命を終えていく姿を切り取ったのだろう。

旅立つ君へからこの曲へのつなぎが絶妙だ。

血の香りが滴るkamakura、どことなく78-0を思い出す。

血液どころか骨(t-born)まであるわけだけど。

ほんのりダークなのは嫌いじゃない。

doukesinohane.hatenablog.com

登場人物について空想していたら、思いのほか長くなってしまった。

熊と踊れ。

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(下)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(下)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

少し違った「犯罪小説」を読みたい。

面白い外国の小説を探している。

ハードボイルドで、人間味あふれる作品を読みたい。

そんな君には「熊と踊れ」がおすすめだ。

主人公はレオナルド(レオ)、フェリックス、ヴィンセントの三兄弟。

しかし、ただの兄弟ではない。

なんと幼い時から立派な「銀行強盗」になるために、父親から猛特訓を受けた、いまだかつてない兄弟だ。

そんな残酷な運命を背負った彼ら。当然、考え方のこじれが出てくる。

父親の非常識な常識を植え付けられた兄弟たちが、大きくなって銀行強盗を企てる。

皮肉にも、かつての父親のように。

果たして勝つのはレオたち兄弟か、はたまたブロンクス警部有する警察かー。

ストーリーはあっさりしすぎているほど簡潔だが、中身が濃い。キャラも濃い。

そして、終始人間に対する愛で溢れている。

初めは上巻を読むだけでお腹がいっぱいになると思うけれど、頑張って下巻も読んでほしい。

下巻中盤、ある人物の言葉に私は涙を堪えることができなかった。

読んでよかったと心から感謝した。

しかも下巻には、読んだ人しかわからないあるどんでん返しが仕掛けられている。

そこも楽しみにしておいてほしい。


この作品が好きな人は「甘い毒」も良い。

甘い毒  世界探偵小説全集 (19)

甘い毒 世界探偵小説全集 (19)

なぜ「甘い毒」なのか。ネタバレを含むので言わない。それは、小説を読んでからのお楽しみということで。