「個性派」読書好き集まる ゆずりは読書会へようこそ
ゆずりは読書会。
ここでは五人の「本好き」たちが、
月に一度集まって討論をしている。
討論と言っても、個々の主張がぶつかるような過激なものではない。
いたって穏やかなものだ。
会長は萩沼栞(はぎぬま・しおり)。
先代の楪彰(ゆずりは・あきら)から遺志を受け継ぎ、この読書会を経営している。
運営費の一部は支援基金として、NPO法人に送られる。
病で急逝した楪は、「子供たちのための図書館を作る」のが夢だった。
現在、会長の萩沼が実現に向け、本の魅力を日々発信中。
読書会の風景をインターネット配信することもあり、人気を集めている。
好きな小説家は太宰治と夏目漱石。
「こころ」と「人間失格」を愛読している。
現在、メンバーは以下の四人。
一人目は、田中信弘(たなか・のぶひろ)。
三国志に造詣が深く、暇さえあれば手に取っている。
時代小説も好きで、池波正太郎の小説は全巻読破した。
気さくな人柄が男性を中心に受け、ムードメイカーとしての地位を確立しつつある。
大きなお腹がチャームポイント。
メンバーからは「タヌキさん」と呼ばれている。
二人目は凛棚修平(りんだな・しゅうへい)。
五歳でシェイクスピアのハムレットを読了。
弱冠十歳にして、第一回目の読書会大賞を受賞した。
そのほかにも論語を暗記するなど、常人離れした記憶力と読解力を持つ。
切れ長の瞳と度の高い眼鏡が、彼を年齢より大人びて見せている。
その審美眼は本物だ。
付いたあだ名は「現代の澁澤龍彦」。
受賞時に彼が紹介したのは、トマス・ピンチョンの「重力の虹」である。
将来はフランス文学を研究するために、博士号を取得することを念頭に入れている。
三人目は「エンタメ小説の女王」安藤なつめ。
背中まで伸びるツインテールが特徴的だ。
メンバーからは、『ナツメグさん』の愛称で親しまれている。
彼女の書評は、読者に語りかけるようであり、女性からの人気が高い。
流行のエンタメ小説なら、ほぼ全てを読んだと言っても過言ではないだろう。
好きな小説は恩田陸の「夜のピクニック」。
青春ものと、小さな動物が出てくる小説が好みらしい。
四人目は森田一文(もりた・かずふみ)十五歳。
凛棚に次いで若い。
読書家の父親に育てられたお陰で、
無類の本好きに育つ。
好きな小説は、ミヒャエル・エンデのはてしない物語。
前述した三人より地味な印象を受けるが、ひとたび本について語ると、態度が一変する。
非常に饒舌になり、一度語り出せばゆうに二時間経過することもざらである。
別名「寡黙なソクラテス」。
国永より博識ではないのだろうかという憶測が、視聴者によって立てられている。
難関校のひとつ、xx高校へ進学することが推薦で決まった。
唯一無二の個性が光る会員たち。
夜が深まるこの時期、本が読みたくなる季節である。
この機会に彼らと共に語り合ってみてはいかがだろうか。
ゆずりは読書会は、東京都杉並区××南1-5-14。
赤茶色の屋根の建物が目印。
開催日は毎月15日(平日:17:00~、休日10:00~)
隔月は動画配信を行う。
現在、新規会員募集中。
電話番号:03-5xxx-22xx。
携帯番号:080-56xx-8800(萩沼)まで。
紙面編集:江久承平
(※この記事は架空のものです。実在の人物や団体などとは関係ありません。)