思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

消費されない作品を作るためのただ一つの決まりごと。

昔から考えてきたことがある。

消費されない作品を作るために欠かせないのは、死の匂いだと思う。

死の匂いがなければ、長く続く作品は作れない。

ふらりとどこかに消えてしまうような儚さ。

今日行ってくると挨拶をした人が、何日経っても戻ってこないような感覚。

もしくは「死んでしまうかもしれない」と思わせる描写。

主人公、つまり筆者の存在が限りなく消えていて、そこに情景だけが残っているような作品。

水のように、普遍的な描写。

一見新しそうに見えて、実は根っこは保守的で、王道をなぞった古典的な作風。

そして仄かに漂うエロさ。

それらが長く愛される作品の共通点だと思う。

不確かな世界に向けて二つのさよならを

「二つのグッドバイについて、話をしようか。」

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)

バスの中で揺られながら、本を読んでいた。

太宰治の「グッドバイ」。

そう、未完の小説である。

私の手元にあるのは前の持ち主が一生懸命線を引き引きした文庫本で、

読んでいると作者ー、太宰治自身の苦悩が手に取るようにわかる。

そして、垣間見える人間の愚かさ。

医療用エタノールの水割りを「サントリイウイスキイ」なんて呼ぶ場面には、哀し過ぎて滑稽とさえ思えた。

人を内心で疑ってばかりの卑屈な男が見るも無残に女に溺れ、

酒とクスリに漬かり、落ちぶれてゆく様を描いた「人間失格」とはまた別の雰囲気がある。

フォスフォレッセンスの「なんて花でしょう」という言葉の余韻が消えない。

この言葉、和訳すれば「燐光」である。

何故このような言葉を太宰は選んだのだろう。

なぜ、なぜという問いが尽きない。

冬の花火の数枝の「日本の人はなぜ、こんなにも指導者になりたがるのか」と問うシーン。

何故好きなのか。それは教えるほうが、教えられるよりも都合が良いからだ。

言いたいことを言いたいだけ言うことを教えると勘違いしている人たちにとっては、その方がよっぽど心地いい。

批評せれてちっとも高く評価されない自分のこと、プロレタリア文学を「ひどくて目がしらが熱くなって読めない」と言い切り、

時代を「あほらしい」とばっさり切り捨てる潔さ。

なんだ、いつの時代も人の考えることは皆同じなんだ。

この短編集が太宰の独白そのものだった。


この本を読んだことがない人でも、このタイトルに聞き覚えのある方は感が良い。

そう、サカナクションのシングル、グッドバイ。

グッドバイ

グッドバイ

ここには多分ないな


この世界から何を切り出して歌うのか。

山口一郎が不確かなりにも、自分自身で編み出した「人間」「東京」の可笑しさと哀しさ。

不確かな果実の中には何が詰まっているのだろう。

まだ見たことのない未知の世界か、それとも思い出したくもない人々の嘲笑か。

それは果実の中を切り出したものにしか分からないのだろう。

それでも彼は歌う。哀愁を背負ったものにしか分からぬ声で歌い続ける。

歌わないと世界には伝わらないから。

私たちという外側の人間に伝わらないから。

「見つけてしまった」人間が歌う、自分自身の生き様。

その哀切な声で彼は今、何を切り出すのだろうか。

ありふれた幸せと大切な別れ。

わざと変えられたライブでの歌詞に、私は何を見出すのだろう。


人間はなんて空しい生き物なのだろうか。

そして、人間はなんて儚くとも強い生き物なのだろうか。

二つのグッドバイはそう伝えている。


ああまだ読み足りない、聴き足りない。

そう思える七夕の夜でした。

スピッツに出会うまで。

きっかけは一枚のCDだった。

これである。

テレビで懐メロ紹介があるたびに、画面にくぎ付けになって見た「空も飛べるはず」。

そこにあるのは秘められた嘘や、ひっそりと隠し持つナイフや、ごみで埋もれた町とそれらを照らす満月だ。

「それでも」君に笑っていてほしいと歌うのだから、相当な思いだろう。

実際に空も飛べるんじゃないか、とは思わないが飛べたらいいな、とは思う。

赤い血のような絵の具が舞うPVの演出が妙にシュールだったことを覚えている。



イントロとテンポがいいロビンソン、錆が印象的なチェリーと続くこの三曲はメガヒット曲であると同時に、

純粋な気持ちの中に毒があるというギャップもかなりある曲のようだ。

三日月ロック[Analog]

三日月ロック[Analog]



さわって・変わって。みかんが頭上からてんこ盛りに降ってきそうなミカンズのテーマ。

みかんに埋もれて、怖いけれど少しおもしろそうだとも思った。

でも一番好きなのはババロアだった。

なぜ宇宙にババロアが出てくるのだろう。宇宙の中でぷるぷると震えるババロア

毛布は翼になり、世界を包み込む。

普通ではありえないものの組み合わせがかもしだす不思議な雰囲気が、とても好きだった。

エスカルゴも捨てがたかった。

「駄目だなゴミだな」といった否定的な言葉から始まる冒頭は、

ゴミがきらめく世界でと歌う空も飛べるはずにも、俺のせいだと自分を責めるワタリにもつながる。

ざらざらの世界。カタツムリの表面を示しているのだろうか。


断言しよう。スピッツは只、ふわふわしたバンドではないと。

ミスチルやサザンのように分かりにくいが、初期は確実にブルーハーツエレカシに影響を受けたロックだと。

青春生き残りゲームや俺のすべて、メモリーズ・カスタム、僕はジェットを聴けば分かる。


桃をはじめ、8823もラズベリーも猫になりたいも俺の全ても好きだけど、これ以上書くとときりがないから終わろう。

ぜひ、サイクルヒットで終わらずに、ほかのアルバムにも手を出してほしい。

そしてどんどん聴きこんで、お気に入りの一曲を見つけてほしい。

ライブ後の興奮の熱が冷めやらぬ中で。

久しぶりに「ハコ」に行ってきた。

そこで目にしたのは、純粋に音楽を楽しむバンドマンの姿だった。

素のままの、策略とかなにも関係なしに、ただひたすら「かっこいい」を貫く姿。

煙草の香りが立ちこめ、時刻を告げる青白いネオンがぴかぴかと輝いていた。

天井が低くて、壁には落書きと共に告知のチラシがびっしり貼ってあった。

上を見上げればぶつかりそうなぐらい丸っこくて白い照明があった。


「俺らはスタッフを極限まで削って、自分たちの目でライブをやってきた。

だから、今ここにいるお前たちにも言いたい。

一杯辛いこともあったし、うれしいこともあった。

でも、音楽やってなかったら俺たち出会ってなかった。

だからお前たちも全力で楽しんでくれよ。俺らも精一杯頑張るからさ!」


ああ、「ばかになって」楽しむのが一番いいんだ。

売れることも大事だけど、それ以上に本人が楽しむのが、一番大事。

一回原点回帰しないと、やってけない。

他人の言葉じゃなく自分の言葉で、もう一度、振り返ってやってみる。

他の人にも同じことを言われた。受け売りじゃだめだよって。自分の頭で考えなきゃって。


頭をぶっつけて、「これ以上馬鹿になったらどうしよう」!って騒ぐボーカルくん。

笑わせてもらったよ。

最後の最後に好きな曲を目の前で歌ってくれて、ありがとう。

思わず熱を帯びて、頭を振り乱しちゃったよ。

私、あなたのことを忘れないようにするよ。

本を手に取る

夏の図書館は骨の張り付くようなにおいがする。

多分消毒液の香りだろう。

飛水、パラレル、流跡を借りる。

長いこと読みたかったこちらあみ子を読む。

新刊もあったな、この作家。

川上未映子の水瓶の女の子が砕けてしまうシーンが凄く良かった。

小野正嗣を読み返したくなって、マイクロバスを籠に放り込む。

真鶴を読み返す。「世界が変わった」、という場所があったことを思い出す。

チヨダ・コーキのさわりだけスロウハイツの神様を読む。

次々と本を棚から出しては積む。次々本を放り込む。石ノ目、夕子ちゃんの近道、天の方舟、愛のようだ。

ああ、また時間が過ぎている。この時間の境目が無くなる瞬間というのが、とても心地いい。

涼しいところでのんびりしたいのだ。時間に囚われるのは好きじゃない。

せかされるのはもっと嫌いだ。

薄暗い方が、昼と夜の区別が付かなくなるから、いい。

暑い暑いと言いながら、顔は充実している。

私の人生を変えた究極の音楽7選。

あちこち他の曲の感想を書いていたり書き直した文章もありで

長くまとまりがまるでない雑記ですが、それでもよろしければどうぞ。


シーラカンスと僕/サカナクション

ミスチルの深海とはまた別の傑作。

灰色のビル、窒息しそうなニュース、

夜の深く冷たくて暗い海の底を泳ぐ一匹の孤独な魚。

藍色にほれ込み、藍に沈んでゆく。

泡のようなイントロから引き込まれて、最後のディレイまで美しい。

この曲でオルゴールを作ろうと長年もくろんでいる。

その為にバンドスコアまで買っちゃったほどのめり込みよう。

小樽オルゴールミュージアムでオルゴールを買うことが出来たら本望。

白波トップウォーターも下さい。

七年経った今でも想像力をかきたてる音楽。

kikUUiki(初回限定盤)

kikUUiki(初回限定盤)



stage/雨のパレード

心が揺らぎ、流れてゆく様はまさに水流そのもの。

まるで水の入った透明なガラス瓶を手で行ったり来たりさせるかのように揺らいでゆく。

希望や不安、崩れそうな思いを背負って歌う福永くんが思い浮かぶ。

声を失った青年というお題だけで何か書き物が出来そうだ。

他のバンドで言えば5150、starrrrrrr&Run Away、無題、ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト、アルクアラウンド&エンドレスの傾向。

誰かを笑う人の数珠つなぎ、発狂してもあきらめない心、彷徨う人を照らす一対の瞳と暗がりで輝く星。

悲しみの底から這い上がろうとする物語はいつだって私を魅了する。

これらの音楽を泣きじゃくりながら何度聞き倒したことだろう。

一言でいうと「究極の沼のような絶望と犠牲の果てに生まれた希望の音楽」。

何かが変わる、私も変わるきっかけになった音楽。


Change your pops (初回限定盤)

Change your pops (初回限定盤)



The Place Has No Name/ストレイテナー

不便な便利屋の主題歌。

冷たい「名前のない」世界の中で最後に君を見つけ出すという和訳も最高。

白い世界に託されたたった一つの希望。

原色からシーグラス、覚星まで聞き倒しました。

シーグラスもまた淡い夢の中の夏のように儚くていい。

雨が降った後の海は蒼黒く畝っていて美しい。
シーグラスが波に煽られる。
私は砂の上に投げ出されたそれを透かしてみる。
夕日によって赤く染められた髪の毛とシャツ。
また次の夏と海が、白百合の香りと共に訪れる。
誰かの瞳に映る私は、一体どういった風に見えているのだろうか。
今年もまた海を見えるのだろうか。
そんな淡い期待を胸に抱いて今日も眠る。
(一部文章改訂)

「今年最後の海へ向かう」というのが何故か5月だというのが少し怖さもあって好き。

COLD DISCが大傑作だった去年の今頃。勿論今でも傑作。

ここまで惚れたのはkikUUiki以来。


「このCDは購入した時はただの冷たい=「COLD」DISCだけど、

あなたが聴いた瞬間に熱を放ち、光を浴びてGOLD DISCになるだろう」

というホリエさんの言葉は殺し文句。

おそらくこの先ずっと聴き続ける音楽。

原色から惚れます。



夢想家/Ivy to Fraudulent Game

歯車で出来た遊覧船の中にいたと思ったら実は壊れた自転車の上だった。というのは徒労の話。

歌詞がアレでも怖いぐらい好きである。続くこの曲も世界観が破格。

凍りついた寝台の上に寝かされた一人の男が見る果てのない夢。

聴いている自分と、この主人公の世界とどちらが幻なのだろう。境目が分からなくなる。

凡人の私にはとてもじゃないが思考が追いつかない。一生無理。

アルバム全体がブンブンのシングル並みの壮大な叙事詩のようだ。

醜い世界から脱出したいと望む一曲目のUtopiaから最後まで聞き倒したのは言うまでもない。



LIFE/スガシカオ

一言でいえば歩く希望。

一つだってこの世に無駄なものは存在しない。

間違いも絶望も何もかも受け入れて突き進んでいく一人の男。

強く肯定されるこの声に何度励まされたか。

無駄な努力などない。この曲があるから頑張れるのだろう、私は。

だから私は歩く。今日も自分を信じて、自分の生き方を信じて。

回り道だって立派な道だ。


ROUTES/秦基博

テレビで紹介されていて好きになった一曲。

NHKの主題歌であり、未熟な気持ちを持った全ての人に届く応援歌。

間違っていい。はみ出してもいい。そこから何が学べるか。

青の光景は傑作であり、このアルバム収録の嘘、ディープブルー、あそぶおとなが好き。

永遠なんて嘘だ。深い底に沈む君を救う歌、もっと単純明快でいいと誘う遊ぶ大人。

あそぶおとなの対義語は学ぶ子供、ですかね?

青の光景

青の光景


at (liberty)/LAMP IN TERREN

タイトルは和訳で「元気で」。

自分が作り出した鳥籠を抜け出す主人公。

飛べることを最初からあきらめた青年。

彼を救ったのは彼自身の飛びたいと願う心だ。

鐘が鳴り、自由を手にした男の短いながらも壮大な神話。

どうしようもないほど落ち込んだ時、その強靭な音に何度でも鼓舞されたい。

いっそ、羽ばたいてから始まるサビは鳥肌もの。

イカロスは何度でも弧を描く。あきらめない人間がいる限りずっと。

今までの固定観念を吹き飛ばし、私に挑戦する心を与えてくれた一曲。

一曲前のinnocenceもいい。

このアルバム自体がBUMPを髣髴とさせるぐらいの大きな神話。

その神話に惚れたのが私だ。

まだあまり聴きこんでいないので、これから聴こう。



あったら欲しいバンドグッズ、独断と偏見にて。

フレデリック柄ビデオテープ型マステ(SPAM生活&リリリピートver)

KEYTALKのアンティーク人形@スターリングスターver.

雨のパレード雨傘@stage&new place ver・(おそろいでレインブーツ付き)

サカナクションシーラカンスくんのでっかいぬいぐるみ付きトートバッグ(藍色に白地の水玉が浮いている)

ホログラム入りAoi下敷き(角度によって七色に光るよ!)

ストレイテナー@戦士の屍&泳ぐ鳥キーホルダー(夜になると星のように光ります)

シリアルナンバー入りギター型オルゴール(曲はPLAY THE STAR GUITAR、星座の彫刻入り)

Alexandros@thunder柄リュック(白地に黄色の雷柄、初回限定で金色の王冠付きメンバーのぬいぐるみ付き)

色違いでstarrrrrrverもあります。こちらは黒地に金の星の刺繍入り。

バンド版ボーカロイド(そーなんだ!ばりに増えてゆく…。

全30アーティスト、第一弾はスピッツ、二弾はアレキ、三番手にクリープハイプ

オーラル@オーラルシガレット(ココアシガレットに似たなにか。

味はリコリス味と見せかけてブラックベリー味とチェリー味)

脳みそと心臓の形の瓶に入った柘榴味のジャムもあるよ!

銀の彼岸花の形の香水もあるよ!

スピッツ@とげまるキャラクターズフィギュア(一弾は星を抱えたシロクマ、二弾は赤い果実を運ぶツグミ、三弾は幻のドラゴン(半透明にラメ入り、ちっちゃいよ))

BIGMAMA@宝石ドロップ&ダイヤモンドリング型イヤリング


誰かつくってください。実際にあったらごめんなさい。