思考は揺らめく道化師の羽

読んだ本と琴線に触れた音楽を綴る場所。かつて少年だった小鳥にサイネリアとネリネの花束を。

君は慟哭を愛せるか。



the cabs。

それは、たった三枚のミニアルバムから織りなされる壮大な物語だ。

高橋國光という一人の男が紡いだ物語を、首藤義勝が形にしてゆく。

その大がかりな夢の世界はいまも形成されていて、歌い手は変われども本質は変わらない。


初めて聴いた時に、頭を殴られたような衝撃を強く受けた。

オルゴールのような少年の声、それに重なる叫び、「罵る」「汚い」といったマイナスの言葉が平気で羅列された歌詞。

今まで聴いたことはなかった。

それでいてマイナスイメージはなく、むしろあたりにはひんやりとした氷のような静寂が残る。

Lelandで跳ね回るような言葉を歌い、色が消え失せたジャムは琥珀のような印象を残す。

それらは現実の世界の言葉では語られてはいない。

どこか遠い国の、夢の世界の言葉たちで綴られている。


この物語の世界に入り込むには、勇気と覚悟が必要だ。

君は慟哭を愛せるか。

「ひとつになりたい」、その叫びを丸ごと受け入れられるのか。

愛して、自分のものにできるか。

そして、人生を飲み込まれないようにできるか。

強い物語には責任が付きまとう。人生を縛ってしまうほどの強い影響力がある。

あなたにその覚悟はあるか。